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学習研究所

「動かすヒント」の設計 プリントが動き出したら

シリーズページに、1問目を指で動かして確かめる「動かすヒント」を置きました。作るときに参考にしたフィードバックの研究と、プリントで見た形のまま動かせることなど5つの設計の指針を紹介します。

※本記事は、執筆過程の一部でAIを補助的に活用することがあります。引用論文や参考資料については原典を確認し、最終的な内容は編集部の責任で確認・公開しています。

こんにちは、アリスパス学習研究所です。

アリスパスのシリーズページに、「動かすヒント」を置くようになりました。そのシリーズの1枚目のプリントにある問題を、画面の上で指で動かして確かめられるものです。53−29なら、十の位の玉を1つ一の位へ動かすと、10この玉に分かれます。まずは、2桁のひき算の筆算(くり下がりあり)のシリーズに入れました(ひき算のひっ算のシリーズ)。10の枠に玉を入れる、九九の袋を皿にのせる、時計の針を回す、といった形も用意していて、対応するシリーズはこれから増やしていく予定です。

53−29。十の玉を一の位へ動かすと、10この玉に分かれる

算数セットのブロックやおはじきのような、手で動かして数のしくみを確かめる道具を、画面に置いたものと考えてもらうと近いと思います。今回は、作りながら決めてきたことと、そのとき参考にした教育研究をご紹介します。

参考にしたものから、一冊

Schwartz, D. L., Tsang, J. M., & Blair, K. P. (2016). The ABCs of How We Learn. W. W. Norton.(第F章 F is for Feedback, pp.64–77)

学び方をAからZの26項目に分けて、それぞれの研究と使い方を紹介した本で、Fの章がフィードバックにあてられています。この章でいうフィードバックは、いまの結果と目標とのずれを伝えて、学ぶ人が自分で直せるようにする情報のことです。ほめる・叱るのように、行動がくり返されるかどうかを変える働きかけ(本では「強化」として別の章で扱っています)とは分けて書かれています。

章の中心には、フィードバックに含まれる情報の量を、少ないほうから並べた図があります。「フィードバックなし」「正しい」「まちがい」「どこがずれているか」「ずれの場所と、できればその理由」「多すぎて使えない」の6段階です。どこがちょうどよいかは学ぶ人の知識しだいで、慣れた課題なら正誤だけで足り、初めて学ぶ人には「どこがずれているか」と「その説明」のあいだがよい、と本は整理しています。本が紹介しているレビューでは、算数のソフトの多くが正誤だけを返していて、どこがずれているかを返していませんでした。

よいフィードバックの条件として、本は5つを挙げ、頭文字をとってSTUN-Rとまとめています。ずれの場所を具体的に示す(Specific)、原因を思い出せるうちに返す(Timely)、学ぶ人が読み取れる形で返す(Understandable)、責められていると受け取らずにすむ(Nonthreatening)、直す理由と機会がある(Revisable)、の5つです。あわせて、注意が課題より本人のほうに向いてしまうフィードバックの危うさにも触れていて、正解した子に「かしこいね」と言う返し方を、わるい例のほうに置いています。

設計の指針

ここからは、動かすヒントで決めてきたことの話です。細かい決めごとはたくさんありますが、並べてみると、だいたい次の5つの考えにまとまります。

指針① プリントで見た形のまま動かせる

5つの中で、いちばん大事にしている指針です。新しい見た目や約束ごとが増えると、子どもはそれを覚えるところから始めることになるので、ヒントの形はプリントの表現に合わせています。筆算のプリントには筆算の盤、にんじんやブロックの絵のプリントには同じ絵。ヒントは、プリントが動き出したもの、という形です。

筆算の盤では、数字も筆算のまま書きます。53−29で十の位から1くり下げると、5に斜線を引いて上に小さく4、3の上に小さく10。盤の左上にはプリントと同じ位置に式を書き、うさぎの吹き出しも、プリントと同じく一の位の数を四角、十の位の数を丸で囲みます。

指針② 動かすことを主役にして、ほかは減らす

ポップアップには、見出しや手順の表示、問題の切り替えを出さず、盤と式とうさぎの吹き出しだけにしています。最初に触るまでは、指が玉を運ぶ動きで、何を動かせるかを見せます。

動かすのは、その問題の考え方の要になる1手だけです。53−29なら、十の玉を1つ一の位へ動かして10こに分ける、その1手です。動かしたあとも、もとの数は見えたままにしていて、計算そのものは子どもにしてもらいます。

指針③ わからない理由に寄りそう

つまずいている理由が、計算そのものではないところにあることもあります。そういうときは、そこを助ける表示を足しています。

なんじなんぷんの時計は、針が読めないところで手が止まりやすいので、いまの針の時刻をデジタルでも見せ、ボタンで隠せるようにしました。九九の8のだんは、1問目の8×1だけでは8こずつ増えていく意味が伝わりにくいので、8×9まで進められるようにしています。

指針④ まちがえたら、ずれの場所を返す

上で紹介した本を参考にしているのが、まちがえたときの返し方です。答えがちがっていても、正しい答えは出さず、吹き出しで見直すところを一言返します。この一言を、何回目のまちがいかで変えることも検討しています。1回目は「十のくらいを みなおそう」「25 は おおきすぎるよ」のように、ずれの場所と向きを返し、2回目は「くり上がった 1も たそう」のように、その型の考え方を添える形です。本の図でいえば、1回目は「どこがずれているか」、2回目は「その説明」の側に寄せることになります。

返すのは、丸つけを押したその場です。答えを直せば、何度でも丸つけできます。

合っているか、まちがっているかを返すことも大事です。そのうえで、どこがずれているかのように、理解につながるフィードバックをどう返すかには、これからもこだわっていきたいと考えています。

指針⑤ はなまるで終える

紙のプリントでも、最後にはなまるがつくと、やっぱりうれしいですよね。動かすヒントも、正解したら盤の上に赤いはなまるが描かれて、紙吹雪とうさぎが一緒によろこぶ形で終わります。

正解すると、盤の上にはなまるが描かれる

おわりに

動かすヒントは、プリントといっしょに使うものとして作っています。プリントを解く前に1問目を動かしてみる、まちがえた問題の考え方をもう一度確かめる、といった使い方を想定しています。対応するシリーズと型は、これからも増やしていく予定です。

参考文献

  • Schwartz, D. L., Tsang, J. M., & Blair, K. P. (2016). The ABCs of how we learn: 26 scientifically proven approaches, how they work, and when to use them. W. W. Norton.(第F章 F is for Feedback: Supporting self-improvement, pp.64–77)